scene 09 A-part|罪を抱え込む苦しさ
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コーヒーの香りが広がる中、テーブルを挟んで向かい合いながらも、俺はパンを噛みしめるだけで精一杯だった。
昨夜の光景が頭から離れず、姉の顔をまともに見ることができない。
「……ねえ」
その声に、思わず手が止まった。心臓が跳ね、背筋が固くなる。
「……昨日のこと、そんなに気にしなくてもいいからね」
慰めなのか、それともただの気休めなのか。言葉の真意はわからない。
けれど、完全に突き放されたわけではないことだけは確かだった。
胸の奥で言葉にならない感情がせり合い、結局、俺は黙って小さく頷くだけだった。
沈黙を和らげるように、姉が小さく笑って言った。
「……ほら、支度しないと遅刻しちゃうよ」
そのわずかな笑顔と声があまりに何気なくて、昨夜とは違う温度を感じ、わずかに呼吸が楽になったが、同時に余計に胸が締めつけられた。
scene 09 B-part罪を分かち合えないもどかしさ
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コーヒーの香りが漂う朝。テーブルを挟んで向かい合う弟は、ひたすら黙ってパンを噛みしめていた。
視線を合わせようとしないその様子が、胸に痛いほど突き刺さる。
「……ねえ」
気がつけば声をかけていた。弟の手がぴたりと止まり、肩がわずかに強張る。
「……昨日のこと、そんなに気にしなくてもいいからね」
本心をすべて伝えられるわけじゃない。
でもせめて、罪悪感で押し潰されそうな弟の心を少しでも軽くしてやりたかった。
本当は謝りたい気持ちがある。
でも、全部を言葉にしてしまったら――私が覗いてしまったことも、自分も欲情に呑まれたことも、白日の下にさらすことになる。
それだけはどうしてもできなくて、結局、曖昧な言葉しか出てこなかった。
返事はなかった。ただ小さく頷いたのを見て、胸の奥が少しだけ熱を帯びる。
沈黙を和らげるように、小さく笑って言葉を添えた。
「……ほら、支度しないと遅刻しちゃうよ」
それは、ほんの一瞬でも昨夜の影を忘れさせるための、せめてもの償いだった。
