scene 19 A-part|そっけなさの裏に隠された想い
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姉が外出から帰ってきて一日経過した時
姉が外出から戻ったのは昨日の夜だった。玄関で靴を脱ぎ、ただ「ただいま」とだけ言ってリビングを横切っていった姿が、弟の目に焼きついている。あの一瞬の背中に、確かな拒絶の影を見た気がして、胸の奥が重く沈んだ。
――そして、一日が経った。
朝、昼、夜。
生活の音は同じ家に響いているのに、二人の間には見えない壁が立ちはだかっていた。
食卓に並んで座る時だけは、表面上の「いつも通り」が演じられた。言葉を交わすことはある。だが、その数はひどく少なく、会話が終わるとすぐに沈黙が落ちる。
箸の音や茶碗を置く小さな音ばかりが響き、姉の横顔はどこか遠い。笑顔も視線も、もう弟には向けられない。
食事を終えると、姉は「ごちそうさま」と言って立ち上がり、自分の部屋へ戻っていった。扉が閉まる音がしてからは、物音ひとつ聞こえない。笑い声も、歌うような鼻歌も、もうない。まるで部屋ごと消えてしまったかのような静けさ。
弟は何度も部屋の前まで足を運んだ。扉に耳を当てても、中からは気配すら感じられない。呼吸のように小さな音まで拾おうとしたが、虚しく沈黙が広がるだけだった。
「……なんでだよ」
吐き出した声は、廊下の冷気に溶けて消えた。
仕方なく自分の部屋に戻っても、心は落ち着かない。机に向かっても文字は頭に入らず、ベッドに横たわっても眠気は訪れない。ただ、脳裏に浮かぶのは昨夜のこと、昨日のこと――そしてその先を避けようとする姉の影。
やっと手に入れたはずだった。想いをぶつけ合い、身体を重ね合った。互いの全てを知ったと思った。なのに。
「どうして……」
その問いの答えは、どれだけ考えても見つからない。
ただ、苛立ちと焦燥感だけが募っていく。両親は海外旅行で一週間帰ってこない。誰にも邪魔されず、姉と二人きりで過ごせる、またとない時間――それなのに、一方的に距離を置かれている。
弟は両手で顔を覆い、ベッドに沈み込んだ。胸の奥に渦巻くのは、不安と怒り、そしてどうしようもない寂しさだった。
姉の部屋 ― 夕飯前
夕暮れが差し込む部屋の中で、姉は膝を抱え込んでいた。
膝の上に額を押しつけるようにして座り込み、息を潜める。耳を澄ませれば、家のどこかから小さく生活音が届く。けれどこの部屋の中だけは、世界から切り離されたように静かだった。
ふと顔を上げたとき、視線が自然にクローゼットの隅へと向かう。そこには、洗濯して畳まれた白の下着が置かれていた。レースの縁取りのブラジャーと、同じデザインのショーツ。弟と結ばれた、あの夜に身につけていたものだ。
――自分で選んだ。
弟がきっと好むだろうと予想して、鏡の前で何度も確認してから身に着けた。初めて彼に見せる気持ちで、胸を高鳴らせながら。
あの夜、弟の視線に熱を帯びて震えた心臓。白い布地の上から感じた、熱い吐息と荒い指先。ショーツに受け止めた奔流の熱は、乾いてもなお記憶に焼き付いて離れない。
今、きちんと洗われ、無垢に戻ったはずのその布切れに目を向けるたび、胸の奥がじんと痛む。
愛おしさと、痛みと、どうしようもない渇きが絡み合って、涙を誘う。
――離れなければ。
心の中で、何度も繰り返す言葉。
そうしなければ二人は堕ちていく。互いの境界を壊し尽くしてしまう。世間の目など気にしなければいい、と一瞬は思う。けれど、理性がそれをすぐに否定する。
「わたしは“姉”だから」
小さく、誰にも聞こえない声で呟く。
本当はもっと寄り添いたい。彼の笑顔を近くで見たい。声を聞きたい。けれど、そう願えば願うほど、引き返せない場所へ踏み出してしまう気がしてならない。
だから――冷たく振る舞うしかなかった。
避けるように部屋へ籠もり、食卓では必要最低限の言葉しか交わさない。弟が寂しそうに視線を送ってくるたび、胸が裂けるように痛むのに、それでも視線を逸らす。
愛おしいからこそ、拒むしかなかった。
抱きしめたい衝動を押し殺しながら、彼を遠ざけるしか方法がなかった。
膝に爪が食い込むほど力を込めながら、姉は目を閉じた。頬をつたう涙を、もう拭うこともできなかった。
リビング ― 夕飯前
リビングのソファーに腰を下ろし、弟は腕を組んだままじっと動かなかった。時計の秒針がやけに耳に響く。両親は不在、家には自分と彼女だけ――そのはずなのに、姉は部屋に籠もり、ほとんど顔を見せようとしない。
やがて、足音。階段を下りる気配に、弟の胸がどくりと大きく鳴った。
姿を現した姉は、ピンクのタートルニットに白地の花柄スカートという、どこか柔らかい装いだった。夕飯の準備をするために現れただけなのに、その姿を見た瞬間、抑え込んでいた苛立ちと渇望が爆発する。
振り返った姉の腕を、弟は無言で掴んだ。
「――えっ……!」
驚く声が漏れるより早く、ソファーへと押し倒す。
目が合った。そこには怒りと苛立ちが入り混じった弟の視線。姉は逃げられなかった。
言葉もなく、弟の手がピンクのニットを乱暴に捲し上げる。下から覗いたのは同系色のブラジャー。彼はさらにその布を押し上げ、白い胸を露わにする。
「や……っ、やめ……」
抵抗の声を上げても、彼の手は止まらない。強く揉みしだかれ、熱い舌が胸の頂を捉えた瞬間、思わず背が跳ねる。
そのまま強引に彩葉の唇を奪い、無理やり舌を絡ませた。
そして片手は胸を弄びながら、もう一方はスカートの中へと潜り込み、レースのショーツ越しに乱暴に秘部を擦り上げる。
「んぐ……だめっ……そこは……っ」
翔真の唇から逃れ必死に抵抗を試みるも、力では敵わない。指先が布越しに擦るたび、意に反して甘い反応がこぼれてしまう。
ついに弟はショーツを両手で引き下ろした。ピンクのレースが足元へ落ちる。ズボンとパンツを脱ぎ捨て、彼の熱が姉の秘部に迫る。
「ま、待って……お願い、やめて……!」
脚を閉じようとするが、あっけなく押し広げられる。体重が覆いかぶさり、容赦なく突き入れられた瞬間、喉から声にならない悲鳴が溢れた。
弟の瞳には躊躇がない。ただ黙々と、奪うように荒々しく腰を打ちつける。
「だ……っ、だめ……っ、まっ……!」
必死に訴える声も届かず、重たい衝撃に体は揺さぶられ続ける。
――わたしが避け続けたせいで怒らせてしまった。
胸の奥に、弟をこんな気持ちにさせてしまった事に申し訳なさが込み上げる。
同時に、拒絶しても離れず求めてくることに、どこか安堵すら感じてしまう。
視線を合わせた瞬間、怒りだけではなく、その奥に拒絶された悲しみが潜んでいることに気づいた。
「……っ、ごめ……ごめんなさい……!」
涙が滲む。流れ落ちても、弟は止まらない。
やがて、荒い息の合間に短いうめきが混じる。深く突き立てられ、次の瞬間、熱が一気に注ぎ込まれた。
「っ……ぁ……!」
腕で目を覆い、泣きながらその熱を受け止める。無理やりだからではない。愛していながら拒んでいるふりをした自分への悔しさと、弟への申し訳なさで、涙が止まらなかった。
「……ごめん…なさい……ほんとに、ごめん……」
弟は無言のまま、露わになった胸に顔を埋め、肩で荒く息をしている。やがて彼の熱が抜かれると、秘部からは精が垂れ、
スカートの内側に痕を作った。
まだ怒っている――そう悟る。沈黙を破り、彼が低く問う。
「……なんで、避けるんだよ」
涙に濡れた瞳で見上げるが、答えられずに視線を逸らす。世間体や理性を恐れて逃げ続けただけだと、心では理解している。けれどそれを口にすれば、卑怯者になってしまう気がして、言葉が出なかった。
「……俺だけが、本気だったのかよ」
悲しみと怒りが入り混じる声。
「ち、違う……っ!」
即座に否定する。涙をこぼしながら、必死に言葉を絞り出した。
「わたしも……翔くんのこと……大好き……でも姉弟だから……」
その必死の訴えに、弟の瞳が揺れる。怒りは消えないが、愛情を否定されたわけではないと知った瞬間、表情に安堵が滲んだ。
姉は、勇気を振り絞って本当のことを口にする。自分の立場。姉弟という枠。それでも彼を好きになってしまったこと。このまま続ければ、きっと弟が不幸になるのではと恐れたこと――。
「……ごめん……」
再び謝罪するその声に、弟の怒りが少しずつ和らいでいく。
「……そんなのどうだっていいよ……」
――嫌われていたのではない。
自分だけが相手を想っていたのではない。あの日から変わらず両想いだった。
その確信が、胸の奥を熱く満たした。
そして姉も、涙の中で静かに決意した。
――もう、逃げない。
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