scene 18 A-part|恋人の朝と、姉の決断
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翌朝 ――弟の部屋
薄いカーテン越しに差し込む朝の光が、まだ眠りの余韻を含む室内をやわらかく照らしていた。
先に目を覚ましたのは姉だった。ふと視線を横に向ければ、隣には無防備な寝顔をさらす弟がいる。昨日、一夜をともにしたその存在がこんなにも近くにあることが、胸の奥をじんわりと熱くさせた。
ぼんやりと弟の寝顔を眺めるうちに、昨夜の記憶が鮮明によみがえる。荒々しくも優しかった抱擁。互いの体温を確かめるように交わした熱。――そして、自ら自分の下着を彼のペニスに巻き付けて射精させた瞬間。思い出しただけで、頬が赤く染まる。
自然と意識は下半身へ向かう。昨夜、弟の熱をたっぷり受け止めたまま眠りについた白いショーツ。恐る恐る指先を伸ばし、クロッチ部分に触れると――まだ乾ききっておらず、ぬるりとした精液の感触が指に移った。小さく肩が揺れ、「……まだ……」と囁くように息を吐く。
羞恥と愛おしさが入り混じり、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。弟の寝顔に目をやりながら、姉はそっとショーツのクロッチを秘めた場所に擦り寄せた。染み込まずに残っていた精液と秘部の湿りが重なり合った途端、甘い吐息がこぼれる。息を殺しながらも、身を震わせ、数分間――その小さな背徳的な気持ちよさに身を委ねた。
だが、その時に布団がわずかに揺れる。はっと顔を上げると、弟のまぶたがゆっくり開こうとしていた。
「……っ」慌てて手を止める。けれど時すでに遅く、彼の視界には上半身をさらしたままの自分の姿が映ってしまっていた。
次の瞬間、寝ぼけたふりをした弟が身を寄せ、胸の谷間に顔を埋めてきた。
「ひゃ……っ」驚きに小さな声が漏れる。けれど、その重みとぬくもりが心地よさに変わるのに時間はかからなかった。知らず、吐息は甘さを帯び、微かな震えとなって喉を揺らした。
その声に応えるように、弟の体が熱を帯びていく。肌と肌が触れ合う距離だからこそ、彼が再び昂り始めているのが伝わってしまう。羞恥よりも、少し嬉しい――そんな自分に気づき、姉は慌てて心を鎮めた。
「……だめ。朝からは……」か細い声で制そうとする。だが弟はすでに胸を揉み、唇で触れるように舐め始めていた。嫌悪はなく、むしろ受け入れてしまいそうになる。けれど――。
「……もう、やめよ」意を決し、姉は布団から身を起こした。ずるずると流される前に、強制的に区切るしかなかった。
床に降り立ち、ベッドの下に落ちていた白いブラジャーを拾い上げる。背中に手を回し、ホックを留める動作の最中、弟の視線がじっと注がれているのを感じて頬が熱くなる。
ブラを整え終えると、彼が不意に口を開いた。
「……さっき、一人でしようとしてたでしょ」
その言葉に心臓が跳ねる。狸寝入りしていたのだと悟った瞬間、羞恥と悔しさで顔が真っ赤に染まった。
「ちょ、ちょっと! 見てたのっ!?」
「うん。可愛かった」
怒りに任せて弟の腕を叩こうと近づく。だが軽くかわされ、勢い余って背を向ける形になってしまった。
その隙を突くように、弟が背後から抱き寄せる。ブラジャー越しに胸を揉みしだかれ、声が漏れる。さらにショーツの中に忍び込んだ指が、昨夜の痕跡を確かめるように触れてきた。
「……まだ、残ってる」からかう声音。
顔が真っ赤になり、恥ずかしさで胸が締めつけられる。けれど、口をついて出たのは小さな告白だった。
「……だって……嬉しかったんだもん……まだ脱ぎたくない」
その言葉に、弟は言葉を失い、ただ強く抱きしめてきた。そして背後から唇が首筋を辿り、やがて口づけに変わる。甘く、長いキス。姉の心は蕩けそうになりながらも、必死に現実へと戻そうとした。
「……もう、準備しないと」名残惜しさを振り切るように弟から離れる。
その背中を見送りながら、弟はわずかな違和感を覚えた。ほんの少しだけ――彼女の態度が冷たく感じられたのだ。
「……着替えてくるね」そう言い残し、姉は自室へと向かった。
自室に戻り扉を閉めると、背後から熱を帯びた空気が遠のき、ひんやりとした自室の静けさに包まれた。
姉は背を扉に預けたまま、胸を大きく上下させる。まだ体の奥には弟の温もりが残っていて、それが甘い痺れとなって全身を巡っていた。
ふと視線を落とすと、白のセットの下着を身につけた状態。昨夜弟に何度も触れられ、脱がされ、弄ばれたその下着が、今も肌にまとわりついている。ショーツは――弟の精液を受け止め、湿りを孕んだまま一晩を共にした。
そっとクロッチ部分に触れる。硬くなった部分とまだわずかに湿った感触が混ざり合い、指先に生々しい痕跡を伝える。
胸の奥が締め付けられ、吐息が漏れた。
「……これ履いて……寝てたんだ、私……」
自嘲のように呟く声が震え、頬が熱を帯びる。けれど嫌悪感ではなかった。むしろ、愛おしさに近い。大好きな人が確かに自分を求めてくれた証。それを纏って眠ったことが、不思議な幸福感を伴って胸に広がっていた。
しかし同時に、鋭い現実が心を刺す。
――あの人は弟。血は繋がっていなくても、世間の目から見れば「姉」と「弟」。
ただの恋人にはなれない。未来を語ることもできない。
それが影を落とし胸の中に広がっていく。
(……着替えよう)
着替えて気持ちを落ち着けるため引き出しを開けた。
新しい下着を取り出す。選んだのはレースがあしらわれた紺色のブラジャーとショーツの上下。白のような無垢さを装うのではなく、せめて落ち着きを装いたかった。
肩紐を通し、背中のホックを留める。下着が肌に触れた瞬間、鏡の中に写った自分は少しだけ昨日とは別人のように見えた。
脱ぎ捨てられた白い下着が床に横たわっている。ブラジャーとショーツには昨日の弟との記憶が染み込んでいる。
目を逸らしても、心はその下着に縛られ続けた。
――弟は「好き」と言ってくれた。あの言葉は何よりも欲しかったもの。
胸が熱くなり、同時に締め付けられる。幸せで、苦しくて、どうしようもない。
けれど、この関係を続ければどうなるか。弟を不幸にするのは自分だ。普通の恋人のように振る舞うことなどできない。
「……だめだよ……ね……」
紺色の下着越しに胸を抱きしめ、絞り出すように言葉を漏らし、しゃがみ込んでしまった。
昨夜の甘さは、これまでにない幸福だった。けれど、それに浸れば浸るほど、崖の下に転がり落ちていく未来が鮮明に見えてしまう。
弟の笑顔を思い浮かべた、しかしそれを「姉」として受け入れることができない悔しさで涙があふれた。
ベッドに腰を下ろし、顔を両手で覆う。頬を伝う涙が指先を濡らし、滴となって落ちていく。
「ごめんね……」
その嗚咽にも似た声は小さく震え、部屋の中に溶けていった。
愛しているからこそ、距離を置かなくてはならない。そう思い込もうとするたび、胸は裂けるように痛んだ。
リビングには、湯気を立てるコーヒーの香りが漂っていた。弟はソファに腰をかけ、手にしたマグをゆっくりと傾けながら窓の外を眺めていた。夜の余韻がまだ体に残っているせいか、瞼は少し重い。それでも耳は、廊下を渡ってくる足音に自然と研ぎ澄まされていた。
扉が開き、姉が姿を現す。黒のニットに、チェックのタイトスカート。普段のラフな部屋着とは違う、外出を意識した装い。その一瞬、弟は息を呑み、思わず声を漏らしていた。
「……可愛い」
その呟きに、姉の足が止まる。頬がふっと赤らむのを隠すように、視線を逸らし、何も言わずにキッチンへ向かった。弟の胸の奥に小さな不安が灯る。昨夜まであれほど自分を受け入れてくれた姉が、今は言葉を飲み込んでしまう――それが、ほんの少しだけ冷たく思えた。
キッチンで包丁の音が響き、食卓に皿が並んでいく。二人は向かい合って椅子に座り、静かに箸を動かした。食器の触れ合う乾いた音だけが、二人の間の沈黙を埋める。弟は何度も姉に話しかけたい衝動に駆られるが、言葉にならず喉で消えていく。
食後、二人で並んで立ち、流し台に食器を運ぶ。洗う人と拭く人――何気ない共同作業が、かえって胸を締めつけた。弟は堪えきれず、口を開く。
「……今日、予定あるの?」
姉は一瞬、手を止める。伏せた瞳の奥に迷いを隠しながら、努めて平静な声で答えた。
「友達と、約束があって。……ちょっと出かけてくるね」
その言葉を聞いた瞬間、弟の胸に冷たいものが流れ込む。ほんの少し前まで、互いの全てを分け合っていたのに。
「そっか……」
呟く声は小さく、残念さを隠せなかった。
その時、ふと姉と目が合った。揺れる黒目が胸を刺す。気づけば、弟は手にした皿を置き、そっと顔を寄せていた。
――キスしたい。言葉より先に、その衝動が溢れ出す。
けれど、姉の指先が弟の胸に触れて押し返した。
「……だめ」
その声は冷たくはなかった。むしろ震えていた。拒んでいるはずなのに、拒み切れない弱さを滲ませて。弟の胸がざわつく。
「なんで……」
喉の奥からこぼれた声は、情けなく掠れていた。すぐに我に返り、弟は目を伏せる。
「……ごめん」
それ以上、二人の間に言葉は続かなかった。
片付けを終えると、姉は静かにタオルを畳み、何も言わず玄関へと歩いた。弟はその背中を呼び止めたかった。けれど声は出なかった。
靴音が遠ざかり、扉の閉まる音が響く。
「夜には戻るから」という短い言葉だけを残して、姉は去っていった。
残されたリビングで、弟は立ち尽くす。
さっきまで笑顔を見せていたはずの姉が、急に遠ざかってしまった気がする。頭の中で何度問いかけても答えは出ない。ただ、胸の奥に広がるのはどうしようもない混乱と、置き去りにされたような寂しさだった。
scene 18 B-part
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